皆さんの大切なお子さんが定期的に下痢症状を訴えていたら、親御さんはどう感じますか?
もちろん心配になってすぐに病院に連れて行く親御さんが多いと思いますが、多くの子供は大人と比較して上気道症状や下痢、腹痛などの腹部症状を頻繁に訴える為、ついつい軽視してしまう親御さんもいるかもしれません。
しかし、特に子供の場合下痢が継続すれば脱水に陥る可能性が高い為、下痢は侮れない症状の1つだと思います。また下痢症状が出る疾患の中には、重篤で命に関わる危険な疾患もあるため、早急に医療機関で精査しましょう。
その他に子供の下痢症状の原因の1つには、起立性調節障害(OD)と呼ばれる疾患もあります。起立性調節障害の場合は、原因不明の軽度な下痢が継続してしまうという特徴があります。
お子さんの抱える下痢の原因が起立性調節障害なのか、それ以外の重篤な病気なのか、親御さんもある程度正しい理解と知識を持っておく必要があります。
そこで、本記事では子供の下痢症状について分かりやすく解説していきます。
起立性調節障害による「下痢」の特徴
小児の場合、たとえ健康体であったとしても年齢や食事内容によって排便回数や便の固さ、性状が変化するため、子供の下痢症状が病的意義を持つのか正常の範囲内なのか正確に判断することは難しいと思います。
しかし、その反面で小児は成人よりも体内の水分含有比率が高く体表からの水分喪失量も多いため、軽度の下痢でも脱水に陥る可能性が高く注意を要します。
そもそもなぜ人間は下痢を引き起こすのでしょうか?下痢にはいくつかの発症機序があります。腸管を流れる食べ物は、水分や栄養素を吸収されて固形便になります。なんらかの原因で腸に異常が生じると水分を吸収できず下痢が起きます。
たとえば、細菌やウイルスなどの感染症に伴う腸炎であれば、侵入した病原菌を外に排出する為に下痢症状が引き起こります。食事摂取の数時間後に急激な下痢や腹痛、嘔気を伴うのが通常で、場合によっては発熱も認めます。
感染性腸炎の場合、本人のみならず周囲にも同様の症状を訴える人間がいるかもしれません。
他にも、アレルギーにより腸管に炎症反応が及ぶと腸管が浮腫み、うまく水分を吸収できなくなる為下痢症状が出現します。小児はアレルギーも多い為、アレルギー性腸炎は珍しくない疾患です。
また、生まれ持って特定の成分を吸収できない体質の子供は下痢を引き起こすことがあります。乳糖を吸収できない子供は、腸管内の浸透圧が高まり水分も吸収できなくなってしまう為水様下痢が出現します。
これらの様な病的な下痢であれば、食事によって増悪する腹痛や嘔気を伴ったり、多量の水様便で体重減少が見られることも多いです。しかし中には、特に下痢を誘発する様な原因に暴露されることなく下痢が続く病気もあり,その1つが起立性調節障害です。
起立性調節障害の場合、そのほかの疾患と異なり下痢症状が午前中に出やすいという症状の日内変動があります。また下痢症状のみならず便秘症状を併発する事もあり、排便コントロールが不良になる点も他の疾患と異なる点と言えます。
ではなぜ起立性調節障害で下痢症状や便秘症状が出現するのでしょうか?これは、上記の様な病的下痢を引き起こす疾患とは全く異なる機序で発生します。
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起立性調節障害による「下痢」の原因
起立性調節障害に伴う下痢症状を理解する上では、まず起立性調節障害という病気の成り立ちを理解する必要があります。起立性調節障害とは自律神経のバランスが乱れることで多くの症状をきたす身体疾患です。
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称であり、お互いがバランスをとりながら身体のあらゆる生理機能をコントロールしています。
例えば、交感神経が活性化すると心臓の機能が活性化し、より強く、より早く拍動する様になります。運動時には体に十分な酸素を届ける為に心臓が拍動する必要がある為、そのタイミングで交感神経が活性化するのです。
逆に副交感神経が活性化すると、交感神経と逆に体がリラックスする様に働きます。心臓の拍動は緩やかになり、筋肉や血管は弛緩し、睡眠中枢を刺激します。
この様に血圧や脈拍、睡眠、排泄や排尿など多くの生理機能をコントロールするのが自律神経の役割であり、ODでは自律神経のバランスが乱れることで生理機能に異常が生じます。
起立性調節障害の場合 起立時にうまく交感神経が活性化してこない為、血液が重力によって下肢に流れていき脳血流が低下してめまいやふらつきなどの症状が生じます。
また、小学生高学年や中学生では身体の急激な成長により心臓と脳の距離が大きく離れる為、より血流が低下しやすいのです。これらの理由から、午前中、特に起立時や起床時に症状が出現しやすいです。
自律神経の腸管に対する働きは、交感神経の活性化によって腸の動きは止まり、副交感神経の活性化によって動く様になります。
起立性調節障害の場合、自律神経が乱れている為過剰に交感神経が活性化すれば便秘になってしまいますし、逆に過剰に副交感神経が活性化すれば下痢になってしまう訳です。これが起立性調節障害の子供が、誘因なく午前中に下痢や便秘を繰り返す理由です。
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起立性調節障害による「下痢」を治す方法
起立性調節障害の下痢症状を治療する上で最も重要なことは、まず医療機関に受診して早期に診断をつけることです。仮に病的下痢であれば脱水により急性腎不全に陥る可能性もあるため早期診断が肝要です。
起立性調節障害の診断がつけば、まずは子供本人や親御さんがしっかりと起立性調節障害という病気に対する理解や認識を持つことが必要です。
その上で、治療の中心は非薬物療法になります。規則正しい生活や、乱れた睡眠時間を少しでも改善し、適度な運動で自律神経を刺激してバランスを正常化していくのです。
また、多くの場合は成長と共に自律神経のバランスが安定して行く為、自然経過で改善して行くことも多いです。
起立性調節障害の厄介な点は精神的ストレスがさらに自律神経の乱れを生み、逆に本人にとってリラックスできる場面ではストレスが緩和され自律神経が安定し症状が改善する点です。
好きなことや遊びには行ける為、周囲の人からすればサボっている様に見えてしまいますが、起立性調節障害はあくまで病気であるという認識が重要です。下記記事ではそんな子供について詳しく解説していますので参考にしてください。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)