「どうしてうちの子は朝起きないの!夜だってもっと早く寝なさい!」
この会話はどんな家庭でも聞こえてきそうなお母さんの声ですよね。実際に子供が全然起きなかったり、逆に夜なかなか寝てくれないと親御さんと生活リズムが合いませんし大変ですよね。
しかし、これがもし本人のせいではなく病気のせいだとしたら、それで怒られる子供も、さらにはそれに怒ってしまった親御さんも辛い気持ちになるでしょう。
実際に起立性調節障害(OD)という疾患では生活リズムのズレが生じることで、まさに上述したような症状が出現してしまいます。もしかしたら、あなたのお子さんも困っている1人かもしれません。
もし、起立性調節障害であれば、子供に対して夜ふかしの朝寝坊、怠け物と思わないでいただきたいです。そのためにはODという疾患を理解する必要があります。
そこで本記事では起立性調節障害により寝れない理由や、それに対する対応方法を紹介していきます。起立性調節障害に対する理解が深まり子供自身や親御さんが適切な対応ができるようになれば幸いです。
起立性調節障害と不眠について
起立性調節障害は自律神経のバランスが崩れる病気です。自律神経とは交感神経と副交感神経のことであり、このバランスが崩れることで様々な症状を引き起こす病気なのです。
「副」交感神経という名前なので、つい交感神経をアシストする神経のように思えますが、機能的には真逆の働きをする神経です。
例えば、生物は命に危機を感じるとより多くの情報を視覚的に得ようとして瞳孔が自動的に開きますが、これは交感神経によるものです。逆に安定して副交感神経が優位になれば瞳孔は閉じていきます。
もう一つ例をあげましょう。ストレスを感じると便秘になる人がいますが、これは交感神経が腸管の動きを止めるからです。逆に排便の際は副交感神経が優位になっています。
このように交感神経と副交感神経は基本的に筋肉や臓器に対して真逆の命令を送っています。だからこそ、そのバランスを絶妙に保つことで人間は滞りなく日常を生活しているのです。
しかし、起立性調節障害ではこの自律神経のバランスが大幅に崩れてしまうのです。自律神経は様々な機能を司っている分ODになると症状も様々です。
主な症状としては、起立時の低血圧が挙げられます。
本来、起立時に血液は重力で足の方に多く取られてしまい脳への血流は低下します。そこで代償するように交感神経が働きます。交感神経の活性化で、心臓は普段よりも早く強く鼓動し頑張って血液を脳に届けようとします。しかし、起立性調節障害ではこの代償機能が働かずに脳への血流が低下し症状が出るのです
睡眠と自立神経の関係性
人間は起床した時に交感神経が働き体を運動に適した状態にシフトさせます。その後の活動や運動に対応できるのは交感神経が活性化しているからです。
逆に休憩したり入眠するときには副交感神経系が優位になり休息モードに入ります。人間が朝しっかり目覚め定期的に夜間に睡眠するためには、この交感神経と副交感神経のシフトチェンジがスムーズでなければいけません。
それに対して起立性調節障害の子供は自律神経のバランスが崩れているため、睡眠のバランスも崩れてしまい体内時計にズレが生じます。日常生活とのリズムに乖離が生まれてくるのです。
夜寝る時間になっても体は交感神経モードで眠くなりませんし、逆に朝になっても体は副交感神経モードにシフトしたばかりで起きることがなかなかできないのです。
厄介なのは親御さんがこれを病気と考えずに叱責してしまうと、子供にストレスが加わりさらに症状が増悪する可能性があるということです。
負の連鎖に陥り事態が深刻化すれば当然日常生活に常に支障を来してしまいます。こういったときには病院に入院して体内時計のズレを戻すような非薬物療法を実施する必要性があります。
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起立性調節障害における不眠の対応方法
さて、ODと不眠の関係性がわかったところで対応方法について紹介していきます。
夜寝付けない理由は、どこかが痛いわけでも苦しいわけでもなく、自律神経のバランスが崩れていることが原因です。つまり、崩れた自律神経のバランスを徐々に元に戻すことが治療として最も理に適っているのです。以下に具体的な方法を挙げていきます。
疾患への理解を深める
最初に行うべきは疾患に対する理解を深めることです。今おかれている状況をしっかり理解し、ODは根性で治るようなものではなく病気であるということを明確に意識することが重要です。
本人だけでなく家族や周囲の環境からの理解も必要です。特に家族からの叱責がそれだけでストレスになり起立性調節障害の悪化を誘発しかねないからです。
非薬物療法(適度な運動や規則正しい生活習慣)
これは投薬や特別な治療ではなく、あくまで生活の中でできる工夫のことを指します。
・日中の適度な運動
・睡眠や就寝環境の改善
・規則正しい食生活や日常生活を目指す
・ストレスの原因になりそうな学校生活を見直す
こういった日常の工夫で徐々にズレた体内時計を元に戻していく作業が必要になります。そして、これこそが不眠に対して最も効果的な治療法になると考えられます。
医学的介入(光目覚まし時計等を活用した光療法)
上記のような非薬物療法でもなかなか症状が改善しない場合には、医学的介入が必要となります。具体的には睡眠薬による睡眠の補助や、光療法が挙げられます。
光療法とは太陽光と類似した光(光目覚まし時計等)を日中に浴びせることで体内時計をリセットする治療法です。
下記記事では「起立性調節障害の治し方・子供に対して親御さんができること」をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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【参考】
田中大介 監修『起立性調節障害(OD)朝起きられない子どもの病気がわかる本』 講談社
日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)