起立性調節障害のようにめまいや頭痛など様々な症状を来す病気として脳脊髄減少症というものがあります。
こちらの記事では、起立性調節障害と脳脊髄減少症について解説し、両者の違いなどについてもお話していきます。
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脳脊髄液減少症と起立性調節障害の違い
めまいや頭痛は脳脊髄減少症、起立性調節障害両者に共通してみられる症状です。これから説明していきますが、頭痛に関してはどちらも横になっている時より立った時の方が見られやすいことも似通っています。しかし、病気の成因、病態自体は全くことなるため、治療なども異なってきます。
脳脊髄減少症は外傷などにより髄液が減少することが主な原因であるため、立位時の方が髄液がより減少しやすく頭痛は誘発されやすいです。
起立性調節障害は自律神経の調整のバランスに問題があるため、体位を変換した際に頭痛などの症状が最も見られやすくなります。この点は、脳脊髄減少症と似ていますが、起立性調節障害の場合、自律神経の働きのパターンから、午前中に症状が重く、午後には改善することが多い点が脳脊髄減少症とは全く異なります。
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脳脊髄減少症とは
脳脊髄減少症とは名前の通り、髄液という脳と脊髄の周りを満たす液体が減少する病気です。髄液は脳を保護する役割を担っているため、髄液が減少ずることでめまいや頭痛、首の痛みや倦怠感など様々な症状が見られます。特に頭痛はよく見られる症状に一つであり、横になっている時よりも、立っている時の方が症状が出やすく、強い傾向にあり、起立性頭痛が典型的です。
髄液が減少する原因を特定できないことも多いのですが、この病気の原因としては、軽いケガや交通事故などの外傷、腰椎穿刺という腰の骨の間から針を入れ麻酔をしたり髄液を採取したりする処置などと関連があります。
検査で髄液が漏出している所見を特定できることはそれ程多くありませんが、CTやMRI、シンチグラフィーなどを行うことがあります。
治療方法としては、安静と十分な水分摂取による保存的な治療と漏出部位を塞ぐブラッドパッチと呼ばれる治療方法があります。
脳脊髄減少症のセルフチェック
脳脊髄減少症では以下の症状がよく見られます。
- 特に立位時に増悪する頭痛
- めまい
- 耳鳴り
- 視力低下
- 全身倦怠感
これらの症状がないかチェックしてみてください。
起立性調節障害とは
起立性調節障害とは、ストレスなど何らかの原因で自律神経である交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで様々な症状を来す病気です。体が大きく成長し、ホルモンバランスの変動が大きい小学生高学年~高校生の思春期に多くみられ、ほとんどの場合で成長とともに症状も改善することが多い病気です。
早朝起床時が1日のうちで最も症状が重く、起き上がることが困難で、めまいやふらつき、頭痛や腹痛など実に様々な症状が午前中を中心に見られます。典型的には、症状は起床時、午前中にひどく、午後になるにつれて改善していくことが多いです。
自律神経は私たちの身体の様々な代謝調整を行っています。血管の収縮や拡張を調整しているのも自律神経であるため、特に、体内の血液の流れが大きく変動する臥位→立位、長時間の立位などの時に症状が出やすいことも特徴です。
一般的に、私たちは座っている時には、重力に従って、血液は下肢に溜りやすくなっています。そこから立ち上がると、心臓や脳への血流が下がってしまうことは容易に想像がつくと思います。
しかし、実際には私たちは立ち上がる際に失神することはありません。なぜなら、立ち上がる際に私たちの体は自動的に交感神経を活性化し、下肢などの末梢の血管を収縮させ、心臓、脳への血流を保っています。起立性調節障害の子どもはこの交感神経の自動的な活性化に乏しいため、起床時や立ち上がる際に多様な症状が出てしまいます。
また、自律神経の1日の働きには大まかなパターンがあります。基本的に、午前中は交感神経が優位に働き、就寝に近づくにつれて副交感神経が優位になっていきます。朝方になると、睡眠時に活性化した副交感神経から交感神経にスイッチし起床に向けて体を起こしますが、このスイッチがうまくいかない場合、朝なかなか起き上がることができず、午前中も調子が悪いことが多くなってしまうのです。
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起立性調節障害のセルフチェック
日本小児心身医学会が出している起立性調節障害の診断に使用する症状としては以下のものがあります。
- 立ちくらみ、めまい
- 起立時の気分不良や失神
- 入浴時やストレスがかかるなど嫌なことで気分不良
- 動悸、息切れ
- 朝起きることが困難で、午前中が特に調子が悪い
- 顔色が悪い、青白い
- 食欲不振
- 頭痛
- 腹痛(前兆なくへその周りが痛い)
- 倦怠感あるいは疲れやすい
- 乗り物で酔いやすい
上記11項目のうち、3つ以上該当すると起立性調節障害の疑いがあります。2つ該当していても、症状が強ければ起立性調節障害が疑われる可能性があります。
気になる症状がある場合は、一度セルフチェックを行い、疑わしい場合は医療機関を受診することをおすすめします。
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